小児眼科のご案内

斜視とは?

斜視とは両眼の見る方向がずれていることです。右眼で見えているところと、左眼の見えているところが違うことです。「生後6ヶ月までは斜視の診断は出来ない」と言うのは正しくありません。確かに、視力も眼球運動も発達し始めたばかりですから、常に両目の視線が真っ直ぐになるとは限らないのですが、正常児の基本は真っ直ぐな眼の位置です。常に内斜視であったり、外斜視であったりすれば、早急に眼科専門医を受診して下さい。先天的な眼の病気が原因で斜視になっていて、手遅れにならないうちに、治療が必要かもしれないのです。

また、たとえ、眼の病気ではなくても斜視のよる弱視になりかけていて、早期に訓練が必要な場合があるのです。

偽内斜視(仮性内斜視)とは、一見寄り眼に見えるのに、本当は斜視ではないものをいいます。日本人の乳児期には、このように見える子供がよくいます。眼の内側に黒目があって、いかにも寄っているように見えます。まして横目をすると黒目が内側にかくれて白目だけになるので心配していらっしゃいます。しかし、成長して鼻が高くなって眼の内側の白目が見えるようになると寄り眼に見えなくなって、寄り眼が自然に治ったと思う訳です。この顔立ちの場合は鼻の根元をつまんでみると、眼が寄ってないみかけに変わるので納得してもらえます。

また、「子供の時の寄り眼は放っておいても大人になったらなおる。」というのは間違っています。大人になったら治った寄り眼というのはもともと仮性内斜視であって、斜視ではなかったというだけなのです。本当に斜視であれば放っておいては手遅れになることがあります。できるだけ早く専門医を受診する必要があるのです。

I.調節性内斜視

内斜視の90%以上は遠視が原因で起こります。だから、遠視の眼鏡をかければ治ります。 しかし、眼鏡をかける時期が遅過ぎたり、きちんと一日中かけなかったりすると、眼鏡をかけるだけでは治らなくなります。

そして、眼鏡だけでは完全に治らないからと、斜視手術を加えますと、直後は良い状態であっても、何年か経ってから、今度は外斜視になってしまうことも、しばしばあります。

幼児期早期から多焦点眼鏡を試みたり、遠視の度数を何度も強く変更したり、出来るだけ眼鏡をはずさないようにするだけでも、手術をせずに治ることがあります。

手術をするのは最後の手段として、慎重に慎重を重ねることが大切です。

なお、眼鏡をかけ始めた時に、眼鏡をはずすと、眼鏡をかけ始める前よりも、寄り目がひどくなることがあります。しかし、これは正しい調節反応(ピント合わせの働き)が育ってきた証拠で、良い兆候ですから、どうか我慢して下さい。両眼で遠近感・立体感をとらえる力(両眼視機能)がしっかり育ってくると、徐々にはずしても寄らなくなってきます。

II.間歇性外斜視

斜視の中でも一番多いタイプで、一番、性質の良いものです。その理由は(1)この斜視のせいでは弱視にならない(2)両眼で一緒に見る働き(両眼視機能)が曲がりなりにも育つことです。

そこで、両眼視機能が育つ余地がある限り、手術はなるべく先伸ばしにした方が良いのです。というのは、間歇性外斜視は手術をしても、数年後には大分戻ってしまうことが多いため、わざと戻らないように手術の量を多目にする病院が多いのです。

ところが、その結果、手術が効き過ぎて、内斜視(寄り目)になってしまうことも時々起こります。まだ幼児期のうちに内斜視になってしまうと、簡単に寄り目の方が斜視弱視に陥り、おまけに、遠近感や立体感が壊れてしまうのです。難しく言うと、複視を避けるために抑制をかける脳の適応を起こして、このため、視力や両眼視機能の低下をきたしてしまうのです。

内斜視にならなくても、手術前にはなかった上下斜視が生じたり、眼球の動きに左右差が出てきたりして、横目使いにしないと焦点が合わせられなくなることも時に起こります。

元が性質の良い斜視ですから、なるべく手術はものを見る働きがしっかり育ちきる年齢まで待った方が良いという理由なのです。そして、一番大事なことは、この斜視に対しては訓練が有効な場合が多いことです。

間歇性外斜視に対する訓練は二つのポイントがあります。(1)外にずれている斜視ですから、眼球を同時に内側に動かす運動(輻湊)を強くすればいいのです。幸いにして人間のこの筋肉には訓練が効くのです。しかも運動のトレーニングが成人しても効果が上がるように、輻湊訓練も何歳になっても可能です。

(2)もう一つの問題は内斜視のようには強くはないのですが、間歇性外斜視の場合にも抑制がかかります。斜視になっていない時ですら、正しく両眼で見ているとは限らないのです。 詳しく説明しますと、斜視になっている時には、右目と左目が違った方向を向いていますから、ものが二つ見えるはずです。(複視)

ところが、小さい子供の脳は適応力が強いため、二つに見えないように、片方の目からの信号は見えないように適応を起こしてしまうのです。

両目で同時に見なくなると斜視も悪くなる悪循環になってしまうのです。

幼児早期であればこの適応(抑制と言います)を作らないように、年長児であれば抑制を作らないように、片目を隠す訓練をします。幼児期に片目を隠すのは、弱視をひき起こすのではないかと心配する眼科医がいますが、専門医の監視下では決して起こりませんから大丈夫です。幼児期の抑制除去訓練は、まだ柔軟性(可逆性)がたっぷりあるために、全例ではありませんが、かなり効果的です。